求職者が求める情報って?採用サイトのコンテンツ例について真剣に考えてみた。
採用サイトの制作を相談いただくことがあるが、そこに含めるコンテンツを整理したい。
これまでに自分が関わったコーポレートサイトの採用コンテンツ、また、自分は現在自社の採用担当も務めており、求職者からの質問なども参考にした。
「問題を抱えた」採用サイト
「新卒サイトは若者に受けるように面白くいきましょう、派手にいきましょう」という流れ。
一方中途採用サイトは、「さらっと必要情報入れとけばいい。」
何となく広告代理店やweb制作業界にある雰囲気。
ただ、近年働き方も多様化し、終身雇用が保証されてるわけでもないのに、中途と新卒で分ける意味ってあるのだろうか?
あと、大手の代理店などにありがちな、●年版新卒サイトって、毎年採用サイトを作り直すという風潮、これもよくわからない。
毎年、企業のメッセージや、募集職種がコロコロ変わるならまだしも、そうでもないのに、作り直すというのは、お金が有り余ってるの?って感じ。大手企業ならいいかもだが、普通の企業なら、その予算があるなら、もっと他のことに使った方がいいと思います。(自社の魅力蘇訴求コンテンツ拡充など。)
採用サイトにあるべきコンテンツと推考(優先度順)
若干偏見もあるが、採用サイトにあるべきと思われるコンテンツを整理する。
1. 自社の強み・特長
自社のアピールを行う一番の場所。
扱う商材やサービスなどビジネス上の立ち位置を明確にし、事業領域を訴求するコンテンツ。
今、自社にどういう強みがあり、他社と差別化できているのか。
一強の企業が全部持っていってしまうようなこの時代、「この領域のプロ」「最高の品質」という明確なものを持っていることは重要。
求職者にとって一番重要なコンテンツであると考える。
逆にここを言語化できない会社は、どんどん遅れをとるだろうな。
たまに、採用サイト内に「事業紹介」というコンテンツ内で、コア事業をたんたんと紹介しているのを見かけることがあるが、内容的に、コーポレートサイト側に含まれるコンテンツと重複してしまっているケースも多い。
求職者に訴えるべきものとして、独自に整理できるならばその紹介はありだが、そうでないなら「強み・特長」のコンテンツに集約し、関連リンクとしてコーポレートサイトの「事業紹介」にリンクを貼るのが良いと考える。
2. 将来性・ビジョン
企業が今後どんな価値を伸ばしたり、シフトを考えており、どういう将来のリスクに立ち向かうのか。
主に社長や企業の責任者に語っていただくコンテンツ。
変革の多いこの時代、将来のビジョンは、そのままそこで働こうとする人の生き方とリンクする。
今持っている価値を伸ばし続けるというのも一つだろうし、新しい価値の芽に投資・チャレンジするのも一つ。
一番まずいのは、(言葉は悪いが)これから落ち目と言われるような業界において、ただただ現状維持を目指す会社。
将来の方向性は「様々なトライアンドエラーや考察・検証の末に見定められるべき」で、それは時間はかかるし、結果として芽が出ないかもしれない。ただ、求職者は、将来の輝かしい発展と成長を期待でき、社会への貢献を志す企業に惹かれるもの。
3. キャリアパス
入社後にどういう経験を積み、どう成長して会社の中の責任や役割が変わっていくのか。
大企業においては、段階的な職種ランクが明確でイメージしやすいかもしれない。
例えば、、
スタッフ→係長→担当課長→課長、部長
スタッフ→ディレクター→シニアディレクター→チーフディレクター→クリエイティブディレクター
といったもの。
ただ、中小企業においては、全員がプレイヤーでありマネージャーであるという状況は起こりがちだと思う。そうだとしても、どういう形でステップアップがあり、どういう裁量を与えられるのかは、クリアな方が自分の入社後イメージしやすい。
4. 最初に任される仕事
募集職種ごとで、どういうプロジェクトに配属されてどういう役割をあたえられるのかをまとめたコンテンツ。
ここは、正直に言えば、その人の適正やスキルによります、としか言えないところはあるが、企業側がどんな選択肢を持っているかは、伝えられる範囲で伝えてあげると親切。(採用サイト内でどこまで言うかは微妙だとしても、求職者の情報ニーズがあるのは確か。)
特に「経験は少ないが熱量の高い人」には響く部分。
中途採用の人などは、ゼロからのスタートではなく、これまでの経験を生かし、最初から戦力として、企業側もイメージしているはず。
そういう人に「雑用のような業務からスタートする」といった誤った印象は持たれてはいけない。
5. 教育体制
入社後、どのようにその会社の業務やルールを覚え、スキルアップをしていくか。
通常、OJTと呼ばれる教育係がつけられることが多いが、会社によっては「仕事やりながら覚えて」みたいな突き放した対応になってしまっていないかは気になるところ。
- 誰が
- どのように
- いつからどのくらいの期間
こういうことが明示されている方がいい。
教育というところが体系化されていないと、教育係に任命された人の業務量は単純に増え、パフォーマンスが落ちるということも考えられる。
企業として、教育にどう取り組んでいるかは、求職者にとってはその「企業がどうスタッフと向き合っているかを見るわかりやすいポイント。
人に対するケアは、その会社そのものの誠実さを表しているとも言える。
入社直後、孤独になってしまうということはあってはならないし、サポートの手は差し伸ばされるべき。
逆にそこがきちんとしていると自認している会社はぜひ、そこを情報として伝えてあげてほしい。
6. 働き方
平たくいってしまえば「ブラックじゃないかどうか。」
ただ、ブラックの定義も難しいところがある。新規上場企業とかだと、早々に成果や売り上げが必要、ということもあり、激務になりがちと聞く。
その分やりがいや、成功した時の達成度や報酬的なものもあるので、「激務=ブラック」と定義付けるのは早計。
その他、特に受託型の制作会社、季節要因の強い会社などは、忙しさの波が激しい状況は起こりうる。そのため、
ストレスや負荷が溜まりそうな状況に会社としてどう取り組んでいるのか。
リスクヘッジの仕組みがあるのか
ということは、必要な情報と思われる。
一方、ただただ、怒号が飛び交うとか、パワハラが横行してるとか、一週間家に帰れない、とかそういうのは論外。
そんなことが起こっている会社は、webサイトにそんな情報は記載しないし、記載出来ない。
ちゃんとスタッフのサポート体制がある会社はそれをメリットとして伝えてあげるのは安心感に繋がる。
7. 会社の雰囲気
敢えて言葉にすると、
活気に満ち溢れている、各人が各々が独立して動いている、静かで大人な感じ、部門間連携が盛ん、等。
ただ、これは言葉で語るのは難しいところ。
求職者はなるべく自分が入社後、その会社にどう溶け込めるかをイメージする。
そこをフォローするコンテンツとして、例えば、
- 社内ミーティングの模様
- フロアの様子
- ブレストの模様
- 会社のエントランス
- スタッフがリラックスしている状態
など、写真をふんだんに使ったコンテンツを用意してあげるべき。
とはいえ、ここは飾り立てるのではなく、なるべくありのままを表現するのが重要だと思う。
ランチやクラブ活動的なものの写真は最低限でいい。学校じゃないので「会社は仕事をする場である」という普通の認識が欠如している人に志望されても困る。
一番は会社の事業やビジョンに共感してくれる人に志望してもらいたいよね、、と。
8. 会社の設備・環境
働く上で、そこに何が支給され、何を活用できるのか。
- どんな道具が与えられるのか
- どんなハードウェア、ソフトウェアを提供されるのか
- デスクはフリーアドレスなのか、固定デスクなのか
- 会議室は自由に使えるのか
- ブレストはどう行われるのか
- 休憩スペースはあるか
- 参考書や技術書の本棚はあるか
などなど。
会社に属するとその会社の中にいる時間はもちろん長くなる。
その中で最高のパフォーマンスを出せるのかどうか、そのための外部要因がどの程度そろってるのか。
こういう情報をオープンにしない会社って多いですが、求職者にとっては必要な情報だと思います。
ちょっと自分が関わっていることを例に、限定的かつ具体的な例をあげると・・・・
webサイトデザイン制作であれば、AdobeのPhotoshopではなくXDやInDesign、その他UIデザイン制作ということだとFigmaやSkecth、などツールは様々。職種ごとで使われるメインツールは、知っておきたい。スタッフ側に裁量が与えられており、自由なら良いのだけど、会社全体のパフォーマンスということを考えると、そこは統一されているべき。ちょっと横道かもしれないが、パソコンのOSとかも個人的には気になるところ。
世の中には、利用するOSに並々ならぬこだわりを持っている人もいる。
まぁ、自分がそうだったりするのだが、今は、もう自分はMacOS以外のパソコンは使いたくない。そこに変な縛りがある会社は、正直わがままかもしれないがキツい。パソコンは仕事道具であり手になじんだものを使えるというのは大事なんじゃないかなって思う。個人が選べるならいいんだけど。このあたりは個人的見解です。ごめんなさい。
9. チーム・体制
プロジェクトを一緒に行うチームはどのように組まれるのか。
大体何人体制で進むのか。毎回同じメンバーでやるのか、プロジェクト単位でその都度組まれるのか、等。
いずれにせよ、誰と仕事をするのか、というのは、場合によっては大きな心理的負担、ストレスになりがち。新たに会社に入る人にとっては気になるところだと思う。
10. 社員紹介
会社にどういう人がいるのか、会社に属する人の自己紹介コンテンツ。
インタビュー形式だったり、1日のスケジュール、趣味、仕事へのこだわりなどの提携フォーマットに沿った形など様々。
一緒に仕事をするであろう具体的な人の紹介があるというのは、入社後をイメージするのに手っ取り早いコンテンツ。
先輩社員を見ると、数年後の自分をそこに投影して考えられるというのもメリット。逆に言えば、憧れの自分の姿からかけ離れた写真紹介になってしまっていると、求職者の心は離れてしまう。
正直に正しく、かつ魅力的な見せ方が重要。
ちなみに、新卒社員に向けては「先輩社員の紹介」で違和感ないが、中途採用の人が多い昨今、新卒と中途を明確に分ける必要がなければ、「社員紹介」的な広い意味のラベルにしておいた方が汎用的。
11. 社員の1日
社員の1日コンテンツは、上記の社員紹介に絡めて紹介されることも多いと思う。何人かピックアップして、一日の動きを時間単位で紹介するコンテンツとしてよく見かけるものだが、個人的には、内容が薄いものが多い印象。
案件内容など具体的に明かせないのはわかるが・・ここは可能な限り具体的に、その職種が事業の中でどのように位置し、何を行うことで企業活動に貢献するのか。そこをやりがいのあるものとして訴求するべきと考えます。
あまり響かない例を1つ。例えば・・・
1. 朝メールチェック、必要なタスクをデザイナーに指示。
2. 同僚とランチ。おしゃべりがはずむ。
3. 得意先で打ち合わせ。
4. 帰社後議事録をまとめ終わったら、カフェでお茶。
5.明日の用意をすませておつかれさまでしたー。
こんなの。個人的にはこんなに甘くもゆるくもないし、あくまで一例だとしても、一日にやらないといけないことはもっと多層的なもの。ここは「あくまで一例である」という前提で具体性のあるものだと、入社後をイメージできるコンテンツとしては意味があるものだと考える。
12. 福利厚生
育休や有給休暇、会社のレクリエーションやクラブ活動など。
働き方にダイレクトに関わる部分は手厚めに紹介すべき。
ただ、レクリエーション的な部分はサラッとでいいと思う。あくまで本筋は業務の魅力と内容。
13. 採用ステップ(エントリー方法)
どういう形で採用が進んでいくのかを明示していない採用サイトは多い。
採用面接の際、すごく印象が良ければ、想定のステップを飛ばして最終面接にいったりすることもゼロではないと思うので、明示していないのかもしれないが、ステップが固定しているようであれば、面接が何回あるのか、その面接には誰が参加するのか、試験やSPIのようなものはあるのか。大体のスケジュール感などはあった方が親切。
14. 募集要項
勤務地、給与体系、賞与、人事考課制度、募集職種など、スペック的に必要な情報をとりまとめたもの。
採用募集サイトに掲載されているものとほぼ同じになるかもしれないが、コーポレートサイトにもこれというものは掲載しておいた方が、直接、コーポレートサイトに訪問して、採用情報を見る求職者もいるわけなので、情報としては必要と思う。(コーポレートサイトから求人サイトに飛ばすというのもあるが。)
まとめ・必要なスタンス
スタッフは大事な価値であり、スタッフが集まって、会社という組織が出来上がっているという前提で、思い、ビジョン、社会に与える価値、そしてその中で、スタッフがどういう役割を果たすのか、ということをきちんと伝えるべき。
もちろん詳細は入社後に、とか、採用サイトではそこまで伝えられないということは現実問題としてあると思う。大事なことは、「伝えるべきだけど伝えられない」のか「そもそも認識してないのか」「伝えるべきだけど敢えて伝えていないのか」そういう判別が出来ているか、ということだと思う。
ちなみに、求職者に対し、「どうか来てください〜」という媚びるのもダメだし、「こんな人求ム」みたいにやや上から目線に感じられるのも良くない。
立場はあくまでフラットで、共に価値創造を行う仲間を募集するというスタンスで、一緒の働くことで得られるメリットを伝え、発揮してほしい能力を明示することが重要。
ギブアンドテイク。