webサイトの広告賞に価値と意義はあるか。【評価軸曖昧】
たぐと申します。
東京のweb制作会社でプロデューサーをしています。
今回はちょっとコラム的な内容です。
世の中にはwebサイトを評価して「賞を与える」という行事がそれなりに多くあったりします。
しかし、実際その評価軸は曖昧です。
なので、その受賞価値がどの程度あるものか疑問に思いました。
今回はwebサイトを評価する「賞」というものについて考えてみようと思います。
web・広告業界の盛り上げのためには必要。ただ受賞価値は減少。
そもそも、、、webサイトを賞で評価する、というのはどうなんでしょうね。
個人的な印象としては
web・広告業界の盛り上げのためにはあってもよい。ただ受賞価値は減少している。
と感じています。
受賞価値が減少していると感じる理由は、以前のように、「なんかすげー」ということでの評価がされにくくなっているからです。
webサイトってアートじゃないし、
ネット広告=「リスティング広告、アフィリエイト広告、ディスプレイ広告、SNS広告、Youtube広告」が主流の今、コーポレートサイト単体を広告クリエイティブとして評価することに無理が生じていると思うのです。
webサイトの広告賞を3者視点で考える。
次に、webサイトの賞についての評価をそこに関わる3者の視点で考えてみようと思います。
- 広告主
- 制作会社・広告代理店
- 賞の主催会社
この3者です。
順番にそれぞれのメリットデメリットを見ていきましょう。
1. 広告主
実は広告主にとっては、webの広告賞にさほど意味はありません。
なぜなら広告よりも、そこで告知している商品やサービスの価値、売上の方が重要だからです。
賞への応募は、制作会社・広告代理店からであることがほとんどです。
自身の制作した広告に第三者的な評価で営業価値を高めたいって思いますからね。
広告主は、制作会社・広告代理店から出展の打診を「許可する立場」なわけです。出展そのものは、広告主にとってのデメリットはないかもしれませんが、大きいメリットにもなり得ないわけです。
受賞そのものがメディアに取り上げられるようなものであれば、それそのものが広告価値を持つので話は変わります。しかし実際、webの広告賞というものはそこまでのものになっていません。
せいぜい広告代理店や制作会社のwebサイトや会社案内に掲載されて終わりでしょう。
なので、広告主は受賞に興味ないんじゃないですかね。
広告主にとって最も重要なのは、賞への出展そのものではなく広告予算でどれだけの売り上げにつながったのか、その1点のはずです。
広告主にとってのwebサイトの賞というものの価値は限りなくゼロに近いです。
2. 制作会社・広告代理店
「制作会社・広告代理店」の視点で考えるとどうでしょう。
賞への出展費用、審査費用というものを賞の主催会社に支払う必要があります。ざっと3万〜10万円程度が相場でしょうか。
ある程度の規模の会社であれば、気にならない額だと思いますが、仮に受賞して、営業資料や会社のコーポレートサイトに掲載することでどの程度の営業価値を生み出すか、というところあたりが判断基準になりそうです。
3. 賞の主催者
最後に賞の主催者にとってはどうでしょうか。
賞の主催者が一番優先するのは「賞の価値を高めること」です。
そうすれば公益財団法人的なところであれば、予算的なものもつきやすくなりますし、受賞認定マークなどの利用料などで利益を得ることもできます。
ここは私の主観ですが、賞の価値を高めたいがゆえ、大企業のコーポレートサイトを優先して受賞させているように感じることもあります。
※実際私が関わったサイトでそこまで良いものと思ってないサイトでそういう評価を得たことがあるからです。
webサイトの質を審査員は評価できない。
以上3者の視点でメリットデメリットを話しました。
個人的に強く思っているのは
Webサイトの質を審査員という「人」が評価することは難しい。
ということです。
最初に申しました通り評価軸が曖昧です。本質を考えるのであれば、PV数の変化、セッション数の変化、サイト内回遊導線の変化、コンバージョン率の変化などが評価軸にあがるべきですが、審査員はそこまで理解できません。
つまり表面的なうつくしさ、かっこよさ、インパクトのようなもので評価せざるをえないし、大企業の出展を評価しておけば間違いなさそう、というような感情に流されやすいはずです。
なので、結論を繰り返すと、webサイトの賞には、以前のような価値はありません。「webサイトがユーザーの課題解決をできているか?」そこが本質的なwebサイトの価値な訳ですが、それは審査員が評価できるものではないからです。
そもそも広告そのものの様式も変わってますからね。
ポスター、TV等への広告予算は、リスティング広告やディスプレイ広告、SNS広告などに流れており、最近はTVを見てもCMで流れるのは子供向け、高齢者向けの商品が多くなっています。30代、40代は、テレビから離れ、昔ながらの広告に触れる機会は減ってきています。
もし今後のあらたな広告賞の形を考えるなら・・・
人ではなく、Googleあたりが、広告予算がめちゃ少ないにも関わらず、もっとも大きなコンバージョン数を達成したテキストやバナーやキーワード、といったリアルな成果と紐づいたものを評価できないものか、と思ったりします。
「広告=華やか」というイメージからはかけ離れたものになると思いますが、webサイト制作に関わっている1個人としてはとても興味があります。
主な日本のweb広告賞
もちろんすべてを否定するものではないです。
webサイトというメディアそのものへの理解促進、広告主や制作者への気づきになるようなことも含まれる可能性はありますから。
そういう意味では応援したいという思いです。
一応、検索してヒットしたwebの広告賞的なものをピックアップして紹介します。
Webグランプリ
主催:公益社団法人日本アドバタイザーズ協会
参加費用:3万円
2013年からやっていて、2021年で9回目を迎えるようです。
GOOD DESIGN AWARD
主催:公益財団法人日本デザイン振興会
参加費用:一次審査、二次審査ごとで必要。受賞時にも受賞パッケージ費用が必要。7万〜28万くらい。出展形式により変動。
webに限らず、さまざまな優れたデザインを表彰しています。
1980年から続いているので長い歴史を誇ります。
家電、身につけるもの、システム・サービス、メディア・コンテンツなど応募カテゴリーは多岐にわたります。
日本BtoB広告賞
主催:一般社団法人 日本BtoB広告協会
参加費用:応募点数により変動。1〜5作品の場合2.5万程度。会員なら1.6万程度
こちらは1980年から開催されておりすでに2020年で41回の開催実績を誇ります。
カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバル(カンヌライオンズ)
主催:株式会社 日本経済新聞社(日本において)
参加費用:600〜1,000ユーロくらい(日本円で8万円〜13万円くらい)
これは日本ではないですが、大きめの日本の広告代理店が出展しているのを見るので挙げておきます。
価値を正しく評価できるなら意義はある。印象で選ばれるものなら意味はない。
なので今回の結論としては・・・
webサイトの広告賞、クリエイティブ賞については「価値を正しく評価できるなら意義はある。印象で選ばれるものなら意味はない。」ということです。
印象で選ばれるようだと、どうしても内輪での自己満足感が出てしまいます。
そうではなく、真に成果に繋げられた広告をデータとともに提示できるかがそういった賞を主催する側に求められるのだと思いました。私の主観ですけども。