webサイトの運用・保守。定義しておくべきこと。
たぐと申します。
東京のweb制作会社でプロデューサーをしています。
今回は、web制作会社のwebディレクターに向けて、webサイト公開後のサイトの保守の話をします。
webサイトのリニューアルを受託開発し、公開まで漕ぎ着けたが、公開後のwebサイト運用が曖昧なケースって多いです。
CMSを導入し、クライアント側で更新していくことはあると思いますが、
webサイト制作会社側が関わるケースを考えておく必要があります。
運用・保守の話が曖昧だと「新規の営業相談」と「トラブルの相談」がごっちゃになります。
クライアントから「なんかおかしい・・・・」という問い合わせがあり、調べてみたら単にクライアント側のオペレーションミスということもあります。
そうなると、そこにかけた時間と労力は残念ながら無駄コストにしかなりません。
こういったことは一例ですが、保守として何をやるか、何を決めておくべきかは整理しておいた方が良いです。
「保守内容」と「費用請求方法」は分けて考える。
結論ですが、以下のような項目の対応を決めておくと良いでしょう。
- webサイトのアクセス状況把握とそのレポート
- 問題に対するお問い合わせ対応
- アプリケーション保守
- サーバ保守
- 契約サービス保守
- アカウント保守
- ドキュメント保守
- 定期的な微小ページ更新
保守の費用をどう処理するか、についてもポイントです。
- 毎月定額固定
- 毎月実績ベース
- 都度見積
こんなパターンが考えられます。
では具体的に見ていきたいと思います。
webサイト保守の「内容」について
webサイトのアクセス状況把握とそのレポート
webサイトをリニューアルしたは良いが、リニューアルプロジェクト開始時に定義した「リニューアルの目的」「課題の解決」などがどうなったのか、振り返りの機会は重要だと思います。
そういったことがなく、5年間放置、webサイトが誰のなんの役にたっているのかウォッチ出来ていないwebサイトって未だに多いです。
あらかじめKPIと呼ばれる、重要業績計測指標を定め、その数値がどのようになっているか、期待の変動をしているかどうかという視点で継続的にウォッチすることを保守プランの中に入れておくことをお勧めします。
そこで課題が出れば、その改善そのものも別プロジェクトになる可能性はあるわけですし、クライアントと継続的な関係を構築するきっかけにもなります。
Google Analyticsでアクセスログデータを取得できるようにしておき、重要な指標について、Googleデータポータルでクライアントにあわせたカスタムレポートを作ってクライアントと共有しておくと良いですね。
これをしておけば、レポートのために膨大な時間を費やす必要はなく、データポータルのレポートを見ながら、改善点を探る、ということができます。
1. お問い合わせ対応
webサイトオーナーであるクライアントが気にするところです。
「何か不明点があったらどうすれば良いですか?」というものですね。
こういうお問い合わせ対応は保守契約を結んでいないと、対応が難しいケースがあります。問い合わせへの回答も調べるとなると時間も掛かりますから。
- こういうことをしたいが可能か?
- こういう場合はどうすればよいか?
- わからないので教えて欲しい。
内容はいろいろです。
2. サーバ保守
私はweb制作会社のプロデューサーですが、サーバの保守は専門のパートナー会社に依頼しています。
よくあるパターンは、
- webサーバのセキュリティについて相談したい
- システム部門からこんな指摘を受けているのだが対応を相談したい
- 脆弱性診断を受けたい
- webサーバの稼働を監視をしたい
こういう類のものです。
また、そのような保守をどの時間でやるか・・・
例えば365日24時間対応窓口は設置可能か?ということも聞かれたりします。
通常web制作会社ではそこまでの対応は難しいです。
サーバ保守を専門でやっている会社ではそのようなサービスを持っているところもあります。
マネージド型のwebサーバサービス・・・つまり、サーバ保守もプランに含んだ形のサーバサービスもあります。
どれだけ、もしもの時に備えておくか、という感じですね。
3. アプリケーション保守
アプリケーション保守は、主に、バックエンドのシステム開発やCMSのテンプレート開発など、独自に開発を行ったプログラムのことをここでは指しています。
よくあるパターンとしては
- CMSのセキュリティアップデート
- CMSテンプレートのバグ修正
などでしょうか。
開発したアプリケーションで問題が発生したときの対応方法について気をつけておきたいことがあります。
それは「問題の調査」と「調査の結果踏まえた修正作業」は分けて考えるべき、ということです。
なぜなら、問題の調査を始めた段階では、それを修正するのにかかる労力がいかほどか読めないケースがほとんどだからです。
内容のレベルにもよりますが「これは根が深そう」ということもありますし、そもそも「アプリケーションの問題なのか」「webサーバ側の問題なのか」
問題の所在から探る必要がある場合もあります。
場合によっては「調査そのもの」を1つのプロジェクトとしてクライアントに相談できる余地を残しておいた方が良いです。
4. サービス・ソフトウェア保守
これも一次窓口を決めておきましょうという類の話ですね。
- ドメイン
- サーバ証明書
- サイト内検索
- お問い合わせフォーム(サービス利用の場合)
- マーケティングオートメーションツール
- 電子カタログツール
- メルマガ配信サービス
webサイトに導入している外部サービスに対して不明点が出た時にどうするか、という話ですね。
直接サービスベンダーに問い合わせをしていただくこともありますが、そのサービスに対してなんらかのカスタム作業を行なっている場合、一次窓口としてはweb制作会社が行うことが多いような気がします。
5. アカウント保守
各種アカウント管理も運用が進むにつれ、疎かになりがちなものの1つです。
よくあるケースとしては
- webサーバ契約情報・接続情報
- サーバ証明書契約情報
- ドメイン契約情報
- Google Analyticsアカウント
- Search Consoleアカウント
- CMS管理画面ログインアカウント
- データベース接続パスワード
このようなものです。
webサイトオーナー側で設定するもの、web制作会社側で設定するもの、以前の担当者が設定しており引き継がれているもの、、、色々です。
そして、それらの管理が一元管理されないままという、、。
把握できるならまだしも「分からない」というケースもそれなりに多いと感じます。
6. ドキュメント保守
公開後に、何を更新し続けるか、という話です。
webサイトリニューアルに合わせて作成したドキュメントを全て更新していく必要はありません。
本当に必要なものに絞って問題ありませんが
- 設定関係
- サイトマップ
- 機能設計書
- サイト運用マニュアル
これらは更新しておくことをお勧めします。
7. 定期的な微小ページ更新
- トップページに置くサービスバナー
- CMS管理外のテキスト修正
- 人の入れ替わりによる写真の差し替え
といったものが考えられるでしょうか。
ページ更新は、保守ではなく都度見積というケースも多いですが、必ず発生すると分かっているものは、保守に含めておいた方が親切かもしれません。
webサイト保守の「請求方法」について
次に保守費用の話です。
概ね以下のようなパターンに分けられます。
- 毎月定額固定
- 毎月実績ベース
- 都度相談
1. 毎月定額固定
発生する作業の内容と量が予め見込める場合、このパターンが多いです。
クライアント側も、予算ありきなので、定額固定の方が計算しやすいということもありますしね。
2. 毎月実績ベース
やったらやった分を請求する、というやり方です。
実績ベースにするには、単価表的なものをクライアント側とすり合わせておくことをおすすめします。
その上で、対応した分量に応じて請求します。
ある程度規模の大きい会社さんの場合、このケースになることが多いです。
毎月どの程度の作業量が発生するか見込めないところもあるので、お断りせず、受ける前提で考えるのであれば、リソース確保の観点から、作業単価は比較的高く見積もっておくべきだと思います。
3. 都度相談
都度相談のパターンを保守と呼ぶかはやや微妙なところがありますが、お問い合わせ対応や脆弱性診断など環境保守的なものだけ、というケースもありますので、ページ更新や、画像作成などについて都度お見積をすることはもちろんあります。
それぞれ状況に応じて、提案する請求の形は、変えるほうが良いと思います。
webサイト保守としての実務は少ないことが多い
保守ってこんなにやること多いの?大変!
って思う人もいるかもしれません。
ただ、実際はそんなこともありません。
意外と毎月単位で考えたら、問い合わせもそんなに来ないものです。
日本人はリスクを恐れる心配性の人が多いと思うのですが、「もしもの時の保険を売っているようなもの」
と考えると分かりやすいと思います。
クライアント側も予算がありますし、全部やるってことじゃありません。
プランを準備しておく。
プランは、齟齬が起きないものにしておく。
プランをきちんとクライアントに説明する。
ことが大事だと思います。
まとめ
今回は、webサイトの保守について、まとめてみました。
webサイトの保守は、内容と請求方法を分けて考えておくこと、内容については、いろんなパターンがあるので、必要なものをクライアントとすり合わせ、クライアント立場で考えた時に、後になって
「あれ?これどうすんだっけ?」とか、「え?それ費用掛かるの?」といったことにならないようにしておきましょう、ということです。
クライアント側の話かもしれませんが、そこの認識を事前に説明しておけば、web制作会社側にとっての信頼獲得にも繋がります。
保守をそもそもやるべきか、という点については
- 安定した収益が望める
- 継続的なクライアントとの関係を構築できる
- 対応スケジュールを調整しやすい
このような理由で、個人的には受けるべきだと思っています。